研究課題外部評価報告

[2017.3.17掲載]

平成28年度研究課題の外部評価結果報告

衛生研究所が実施する研究課題に対して、研究計画の適正な評価を行うことにより、課題の設定、計画の立案と実施方法、成果の活用等について、よりよい方策を見い出すために、外部評価委員による評価を実施しました。また、評価結果は衛生研究所の研究活動について、広く県民の理解をえることを目的とし、公表しております。

○ 外部評価委員

委員金澤 秀子 慶應義塾大学薬学部教授 (専門分野 分析化学等)
委員高木 敬彦 麻布大学獣医学部教授 (専門分野 公衆衛生学等)

○ 評価項目

事前評価 中間評価 事後評価
評価項目 研究の必要性・緊急性 研究の進捗状況 研究目標の達成度及び成果
研究の独創性・新規性 研究計画の妥当性 研究成果の発展性・応用性
研究計画・研究体制の妥当性 研究体制の妥当性 研究成果の水準
技術的達成可能性 今後の課題及び将来展望
研究成果の展開と反映 研究成果の展開と反映

○ 評価方法

平成29年度経常研究として提出された新規研究 7課題の事前評価、継続研究 1課題の中間評価及び平成27年度終了研究 6課題の計14課題について、所内研究課題評価委員会(内部委員 9名)による評価並びに助言・指導を受け、研究員が研究計画の見直し等の対応を行いました。さらに外部評価委員による評価並びに助言・指導を受け、研究課題の今後の方針を決定しました。また、新規研究7課題については、成果の県政策及び行政現場での活用推進を図るため、本庁事業課の意見聴収も行っています。

○ 研究課題概要、評価結果及び衛生研究所の対応

1.事前評価(7課題)、2.中間評価(1課題)、3.事後評価(6課題)
1 事前評価
No. 担当部 研究課題 研究期間
1 微生物部
細菌・環境生物G
ヒトの便及び市販鶏肉由来Campylobacter jejuni/coliの薬剤耐性に関する研究
-キノロン系及びマクロライド系薬剤耐性に関する遺伝子変異の解析-
29~31
概要 Campylobacter jejuni/coliは食中毒の原因菌として重要である。近年、キノロン系薬剤に対する耐性株の増加やカンピロバクター感染症の第一選択薬剤であるマクロライド系薬剤に対する耐性株が報告されるなど、薬剤耐性菌が問題となっている。
そこで、ヒトの便及び市販の鶏肉から分離したCampylobacter jejuni/coliについて薬剤感受性試験を実施し、薬剤耐性状況を把握する。さらに、キノロン系及びマクロライド系薬剤に対する耐性に関連のある遺伝子における変異を解析し、これら薬剤に対する耐性菌をリアルタイムPCRを用いて検出する方法を検討する。
【外部委員による総合コメントおよび衛研の対応】
2 微生物部
細菌・環境生物G
山間部における感染症媒介蚊の発生状況に関する研究 29~31
概要 これまで様々な蚊媒介感染症の国内感染が危惧されてきたが、2014年にデング熱の国内感染が起こり、その危惧が現実のものとなった。また、2015年よりジカ熱と小頭症の関連が濃厚になり、新たな蚊媒介感染症の問題が発生している。
神奈川県には、国内のみでなく海外からも多くの観光客が訪れている。特に夏を中心とする蚊の発生時期に多くの人が訪れることから、蚊との接触リスクが高いと考えられる。しかし、山間部に生息する蚊の種類および発生時期に関するデータがないことから、山間部における蚊の発生状況についてCO2トラップを用いて調査し、感染症媒介蚊の接触リスクを明らかにする。                       
【外部委員による総合コメントおよび衛研の対応】
3 微生物部
ウイルス・リケッチアG
インフルエンザウイルスのHA活性低下株対策に関する研究 29~31
概要 インフルエンザは、流行規模の大きさ、感染しやすさなどの点から、監視対象として重要視されており、改正感染症法においてもサーベイランスが強化されている。近年のAH3型ウイルスの特徴として、ウイルスの持つ血球凝集能(HA)活性が低下し、型別ができないあるいは分離が困難等の問題が生じている。HA活性低下株は、通常の分離方法では見落としてしまう可能性があり、正確な流行把握をするためには見落としをできる限り抑える対策が必要と考える。
HA活性低下株の見落としを防ぐ方法として、分離条件および赤血球凝集抑制試験(HI試験)条件の再検討を行う。AH3型ウイルスに関してはHA活性低下株に特徴的なNA遺伝子変異があることから、遺伝子変異の有無を確認し、実態把握を行う。また、AH3型以外にもHA活性低下株と疑わしき株が見つかった際には、特徴的な遺伝子変異について調査する。
【外部委員による総合コメントおよび衛研の対応】
4 理化学部
食品化学G
健康危機管理に係る農薬迅速試験法に関する研究
― より多くの食品等への対応及びN-メチルカーバメート系農薬を対象とした検討 ―
29~31
概要 農薬を原因とした食品の有症苦情及び野鳥のへい死事例等に対し、迅速に原因物質を特定することは、健康危機管理において極めて重要である。そこで、平成25年~平成28年の経常研究(研究課題:健康危機管理に係る緊急時の農薬迅速試験法に関する研究)において、有機リン系農薬68種類を対象とし、農薬が加工食品等に高濃度に含まれていることを迅速かつ簡便に確認するための試験法を開発した。
本研究では、前経常研究において開発した試験法について、①測定におけるマトリックスの影響の抑制による添加回収率の改善、②対象農薬としてN-メチルカーバメート系農薬の追加をそれぞれ検討し、試験法の改良を目指す。より多くの食品等に対応し、より多くの農薬に適用可能な試験法を開発することで、健康危機管理体制の強化に繋げる。
【外部委員による総合コメントおよび衛研の対応】
5 理化学部
薬事毒性・食品機能G
GC/MS法による乱用薬物の一斉分析法の開発及びスペクトルライブラリーの構築 29~31
概要 現在、未規制薬物の分析は測定対象ごとに分析法が異なるため検査の長期化につながっている。また検体から薬物を探索・推定する場合、あらかじめ分析機器に登録しているスペクトルライブラリーと比較するが、未規制薬物についての情報は不足している。
本研究では未規制薬物にも対応した「GC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)法を用いた一斉分析法の開発」と「スペクトルライブラリーの構築」を行い、これにより従来よりも検査期間の短縮を図り、また情報の少ない未規制薬物であっても見逃し防止による確実な分析を行う。さらに、神奈川県薬物濫用防止条例に基づく乱用薬物の規制強化のため、未規制薬物を知事指定薬物に指定する際、県内での流通実態に係る情報が求めらており、本研究の成果をその情報提供に活用する。
【外部委員による総合コメントおよび衛研の対応】
6 理化学部
生活化学・放射能G
水道原水中における抗微生物剤の存在実態に関する研究 29~31
概要 河川水中に残留する医薬品成分のヒトや生態系への影響が問題視されている。抗微生物剤はヒトの治療以外にも、畜水産分野やペットなどでも広く使用され、全国の水源河川においてその検出が報告されている。また、医療・畜産分野では薬剤耐性微生物が問題となっており、平成28年に国が示した「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」の中でも水環境中の抗微生物剤濃度の監視は課題として挙げられている。
そこで、神奈川県内の水源河川における現在の抗微生物剤の存在実態を把握するため、主要な水道水源である相模川において実態調査を実施する。併せて、水道原水が浄水場で処理されて水道水となることを想定し、抗微生物剤の浄水処理による挙動についても検討する。
【外部委員による総合コメントおよび衛研の対応】
7 理化学部
生活化学・放射能G
神奈川県における福島第一原発事故の長期的影響の推定 29~31
概要 福島第一原発事故から約6年が経過し、当県では、事故由来の人工放射性核種が不検出となる環境試料が増えてきている。しかし、月間降下物や蛇口水等からは、未だに放射性セシウムが微量ながら検出されている。
そこで、降下物について、1週間程度毎に降下物を採取し、月内の変動性、放射性セシウムの降下は一過性か、あるいは定常的に降下しているのか、気象条件との関連性など、より細かな傾向を把握する。蛇口水については、飲料水からの年被ばく線量を推定するため、毎平日1.5L程度を採取し、3か月分(約100L)ごとにまとめて濃縮した試料について調査する。これらを検討することにより、当県への福島第一原発事故の長期的影響を推定する。
【外部委員による総合コメントおよび衛研の対応】

2 中間評価
No. 担当部 研究課題 研究期間
1 理化学部
食品化学G
合成樹脂製の器具又は容器包装におけるカドミウム及び鉛材質試験に関する検討 27~29
概要 合成樹脂製品には、安定剤や着色剤等の添加剤として重金属化合物が使用されることがあるが、カドミウム(Cd)や鉛(Pb)は毒性が強いことから、器具・容器包装等では食品衛生法による規制がある。平成24年度に国立医薬品食品衛生研究所が中心となり実施した、Cd及びPbの材質試験の試験室間共同試験に参加した際、当所で公定法に準じて開放系の前処理を行った後に原子吸光光度法及び誘導結合プラズマ発光測定法により測定を行ったところ、基準値付近の濃度では良好な回収率が得られたが、基準値より高濃度に含有する検体ではPbの回収率が6割程度と著しく低かった。
一方、マイクロウェーブ法にて前処理を行った場合には高濃度でも良好な回収率が得られたことから、開放系の前処理過程での損失の可能性が考えられた。検査を実施するにあたっては、高濃度域にあっても正確な結果を出すことが求められることから、揮発や他の化合物の影響など、Pb減少の理由を検証する。
【外部委員による総合コメントおよび衛研の対応】

3 事後評価
No. 担当部 研究課題 研究期間
1 微生物部
細菌・環境生物G
細菌性感染性胃腸炎の原因病原菌の解析に関する研究
-多剤耐性菌分離状況及び下痢原性大腸菌の病原因子の保有状況について-
25~27
概要 基質特異性拡張型βラクタマーゼ(以下、ESBL)産生菌など薬剤耐性菌の出現が世界各国で問題になっている。そこで、神奈川県内の医療機関を受診した感染性胃腸炎患者便を検体とし、ESBL及びAmpC型βラクタマーゼ(以下、AmpC)を産生する耐性菌の保有状況を調査したところ、ESBL産生菌の耐性遺伝子は日本で検出の多いCTX-M-9グループが高頻度に検出され、AmpC産生菌の耐性遺伝子は、CIT型が多く分離された。
また、前述の検体を対象として、腸管系病原菌検査を実施し、下痢原性大腸菌の病原因子の保有状況を調査したところ、病原因子が検出された大多数の株がO型別不能(OUT)であったことから、下痢原性大腸菌の分類にはO型別だけではなく、病原因子保有の調査が有用であることが示された。
【外部委員による総合コメントおよび衛研の対応】
2 微生物部
細菌・環境生物G
コリネバクテリウム・ウルセランスの検出法の検討およびイヌ・ネコにおける保有状況の調査 25~27
概要 Corynebacterium ulceransのジフテリア毒素遺伝子検出法を検討した。C. ulceransの保有するジフテリア毒素遺伝子について既報の塩基配列から特異的なプライマー及びプローブのセットを設計し、C. ulceransの増菌培養液から作製したDNAの10倍段階希釈液を用いて定量PCRを行った。その結果、相関係数が0.99以上を示す良好な検量線が得られ、なおかつ101/PCR tubeのレベルでジフテリア毒素遺伝子が検出されることを確認した。さらに、C. ulceransの分離株をイヌ及びネコの口腔ぬぐい液の培養液と混合して培養し、培養液から抽出したDNAを用いてリアルタイムPCRを行ったところ、いずれのサンプルについてもジフテリア毒素遺伝子が正しく検出された。
平成25年度から27年度にかけて、動物保護センターに搬入、あるいは動物病院に来院したイヌ263頭及びネコ130頭について、今回新たに設計したプライマー及びプローブを用い、C. ulceransのジフテリア毒素遺伝子の検出を試みたがすべて陰性であった。
【外部委員による総合コメントおよび衛研の対応】
3 微生物部
細菌・環境生物G
呼吸器系細菌(主にA群溶血レンサ球菌)の薬剤感受性および耐性遺伝子に関する研究 25~27
概要 マクロライド系薬剤(MLs)に耐性を示すA群溶血レンサ球菌(GAS)が、国内外で2000年以降、劇症型溶血性レンサ球菌感染症患者およびA群溶血性レンサ球菌咽頭炎患者から検出され、さらに増加傾向にある。そこで県内の小児科定点および医療機関からA群溶血性レンサ球菌咽頭炎を疑う検体より菌検索を行い、GASを分離し、薬剤感受性測定ならびに耐性遺伝子および病原因子の遺伝子解析を実施した。
その結果、県内で分離されたGASも2000年以降、MLs耐性化が進んでいることが明らかとなり、その耐性遺伝子保有状況を把握した。さらに病原因子emm遺伝子型別法の導入を図るため測定条件等の検討を行い実施可能とした。今後も継続して新たな薬剤耐性菌の動向を監視するとともに、これにより薬剤耐性菌の蔓延防止及び患者の重症化防止に役立てたい。
【外部委員による総合コメントおよび衛研の対応】
4 理化学部
食品化学G
食品中に含まれる揮発性化学物質の分析法に関する検討 24~27
概要 消費者が食品について不安を訴える要因の一つに異臭がある。原因は異物混入、移り香、食品成分そのものから生成したものなど様々である。この様な異臭の苦情では主にHS/GC/MS(ヘッドスペース法付ガスクロマトグラフ質量分析計)測定で食品中の揮発性化学物質を検査しており、その検査結果は原因究明及び健康被害防止に有用である。このため検査には迅速さ、精度、定量性が求められている。
しかし、食品成分の妨害等の影響があるため、食品毎に検査法の検討が必要で時間がかかり、また多くの場合、定量ができないといった問題点がある。そこで、食品成分のHS/GC/MS測定に対する影響を調べ、これら問題点の改善を図った。
【外部委員による総合コメントおよび衛研の対応】
5 理化学部
薬事毒性・食品機能G
化粧品中に配合される紫外線吸収剤の検査の高度化に関する研究 25~27
概要 近年、紫外線による皮膚障害への意識が高まる中、様々なスキンケア製品が市販、利用されている。一方、それら製品に関係する皮膚トラブル等の苦情が国民生活センター等に寄せられている。苦情の原因は様々であるが、スキンケア製品等の化粧品に配合される紫外線吸収剤は、医薬品医療機器等法に基づく化粧品基準で配合制限が定められており、品質管理、法令遵守のためには有用な分析法が必要と考えられる。
今回、化粧品中の紫外線吸収剤成分の一斉分析が可能なHPLC-PDA(フォトダイオードアレイ検出器付高速液体クロマトグラフ)法及び確認試験として使用できるGC-MS(質量分析計付ガスクロマトグラフ)法の機器条件の検討を行ったところ、良好なピークの分離、妥当性確認の結果を得た。また、GC-MS法に適用させるために必要な固相カラムを用いた抽出方法の検討を行い、有用な結果を得た。
【外部委員による総合コメントおよび衛研の対応】
6 理化学部
生活化学・放射能G
神奈川県における放射能汚染に関する研究 ー環境からのアプローチー 25~27
概要 2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故では、約260km離れた神奈川県においても環境、農畜水産物等の試料から事故由来の人工放射性核種が検出され、その影響が明確になった。しかし、緊急時放射能調査等のみでは、神奈川県全域での放射能汚染を知ることは困難であった。そこで、環境の汚染状況を把握する手がかりとして、県内の広域の空間放射線量率を把握するために2012年度より稼動したモニタリングポスト設置地点を中心に、事故由来の人工放射性核種の土壌への降下量を調べることとした。
また、これまでに採取した、あるいは今後採取する河底土や海底土を用い、事故由来の人工放射性核種の河川や海域における蓄積状況の変化を調べることを計画した。
これらのことより、福島第一原発事故後の神奈川県内の環境放射能レベルの把握に努める。
【外部委員による総合コメントおよび衛研の対応】

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