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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.196

お宅の空気、健康ですか?
-化学物質による室内空気汚染-

2020年1月発行

昔ながらの家に比べると、近代の住居は省エネを目的に気密化が著しく進んでいます。すきま風がなくなり、室内の空気が外気と入れ替わる回数が大幅に少なくなることにより、室内に持ち込まれた様々な家庭用品や家具、建材等から発生した化学物質が室内に留まりがちになっています。今回は、こうした化学物質による室内空気汚染について紹介します。

シックハウス症候群

化学物質による室内空気汚染等、住まいが原因となって発生する健康被害はシックハウス症候群と呼ばれています。シックハウス症候群の症状は目がチカチカする、のどが痛い、頭痛やめまい、鼻水や涙、せきが出る、皮膚が乾燥し赤くなったりかゆくなったりするなど多岐にわたります。シックハウス症候群は個人住宅だけでなく、オフィスビルや学校でも問題となることがあり、これらはシックビル、シックスクールなどと呼ばれることもあります。
日本では1990年代からシックハウス症候群が社会問題となりました。対策として後述するように、厚生労働省や国土交通省等が室内空気中の濃度指針値の設定や建材への使用制限等の措置を講じたことから、発症事例は減少しました。しかし、最近は規制物質の代替化合物の使用等による新たな発症例が見受けられるようになってきました。

室内空気汚染化学物質の発生源

室内空気を汚染する化学物質の発生源としては次のようなものがあります。

  • ①建材
    (床・壁・天井等に使用される合板、壁紙、塗料、シロアリ駆除剤等)
  • ②居住者が室内に持ち込んだ家具、家庭用品等
    (家具の合板、カーテン等の繊維製品、家電製品、殺虫剤、消臭剤等)
  • ③居住者の活動
    (暖房、喫煙、化粧、調理等)
  • ④外気
    (交通量の多い道沿いの場合、排気ガス。工場地帯では工場からの排出ガス等。)

室内濃度指針値

シックハウス問題の広がりを受け、厚生労働省は1997年、ホルムアルデヒドについて室内濃度指針値を定めました。その後、2000年、2001年、2002年にそれぞれ対象化合物を増やし、現在13化合物について指針値が設定されています。指針値は現時点で入手可能な毒性についての科学的知見から、ヒトがその濃度の空気を一生涯にわたって摂取しても健康への有害な影響は受けないであろうと判断される値を算出したものになります。

厚生労働省が指針値を設定したことを受けて、文部科学省は2002年及び2004年に学校内教室等の空気に関する学校環境衛生の基準の改定を行い、学校内の環境中で問題になる可能性が考えられる6化合物を対象に判定基準を設定し、定期検査を義務付けました。厚生労働省と文部科学省の指針値及び判定基準を表に示しました。

また、国土交通省は2003年施行の改正建築基準法で防蟻剤(シロアリ駆除剤)のクロルピリホスを添加した建材は使用禁止とし、ホルムアルデヒドを発散する恐れのある建材は発散量に応じ内装仕上げにおいて一定面積以上の使用が制限されました。さらに、換気設備設置の義務付け等が定められました。

2002年にアセトアルデヒドの指針値が設定されて以降、しばらく設定当初の指針値が維持されてきました。指針値の設定から20年近くが経過し、この間に毒性等に関する新たな知見が得られたことや国際的な評価作業の進捗に伴い、指針値の見直しが行われることになりました。2019年1月にキシレン、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシルの3化合物について指針値を改定しました。その他の化合物についても指針値の見直しの必要性の有無を含め、新たな知見の収集や実態調査、試験法の検討などの調査研究が現在進められています。

表 室内空気に係る厚生労働省及び文部科学省の指針値、判定基準

シックハウス症候群を防ぐためには

シックハウス症候群を防ぐためには原因となる化学物質を発生させないことと、発生してしまった化学物質を排出することが大切です。原因物質の発生抑制のためには、建材には化学物質発散量の少ないものを使う(「F☆☆☆☆」マークのついた建材はホルムアルデヒド発散量が少ない製品です)、ホルムアルデヒドや塗料等のにおいの強い家具等を持ち込まない、室内で必要以上にスプレー剤を使用しないといった対策が有効です。原因物質を室外に排出するためには換気装置の稼働(24時間換気装置のついている家屋では装置を切らずに運転し続ける)、積極的な窓開け換気の実施が有効です。

衛生研究所の取り組み

厚生労働省は全国の一般家庭の室内空気中に含まれる様々な化学物質の実態調査を行い、それらの毒性評価とあわせて必要に応じて新たな室内濃度指針を策定しています。衛生研究所ではこの全国調査に参加するとともに、新たな化学物質の分析法作成の共同研究に参画しています。今後も室内空気環境の安全を確保するために調査・研究を継続していきます。

(参考リンク)

(理化学部 上村 仁)

   
衛研ニュース No.196 令和2年1月発行
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