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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.191

結核の検査
診断から分子疫学調査まで

2019年3月発行

結核は過去の病気ではありません。2017年の日本国内の新規結核患者は16,789人で、人口10万人あたり13.3人でした。患者数は減少傾向ですが、日本はまだ結核の中蔓延国に位置しています。結核対策では患者の早期発見、早期治療が大切であり、様々な検査を用いると結核の早期発見や感染経路の解明につながります。今回は、現在の結核の検査について解説します。

結核診断に必要な検査

結核は、結核菌の感染により主に肺に炎症を起こす病気で、咳や痰などの症状が現れます。結核を疑う症状があって医療機関を受診した場合、まず、胸部画像検査(レントゲン・CT)で肺に病変があるかを調べます。そこで異常がみられると、喀痰を採取して抗酸菌検査を行い、結核菌の存在が証明されると肺結核と診断されます。(図1)

胸部画像検査(レントゲン・CT)

胸部画像検査は、肺病変の有無や広がりを観察する検査です。まず胸部レントゲン検査を行い、異常が疑われると、CT検査で詳しく観察します。最近は、典型的な空洞を伴う肺結核が少なく、画像上で他の肺炎と区別するのが難しくなっています。

結核菌を証明する抗酸菌検査

結核の診断に必要な抗酸菌検査は、塗抹検査、培養検査、同定検査の3つに大きく分けられます。
まず、塗抹検査は、喀痰をスライドガラスに塗ってチール・ネールゼン法や蛍光法で染色し、顕微鏡下で抗酸菌の有無を観察する検査です。菌量も分かるため、患者から周囲に結核を感染させる可能性が高いかどうかの判断にも使われます。ただし、抗酸菌には結核菌と非結核性抗酸菌(人から人へ感染しない)があるため、結核の確定診断には、同定検査も必要となります。
2つ目は、培養検査です。喀痰などを培地に接種して、菌の発育を見る検査で、菌が生きているかを知る事ができる大事な検査です。また、この検査で発育したコロニー(菌の塊)を使って、同定検査や薬剤感受性検査を行うことができます。菌が発育しないことを確認するまで固形培地(小川培地)で8週間培養するため、時間がかかります。
3つ目は、結核菌であることを確認する同定検査で、結核菌と非結核性抗酸菌を区別するために必須の検査です。喀痰などの生体材料をそのまま使えるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法や、培養で得られたコロニーを使って検査を行うDDH(DNA-DNA-ハイブリダイゼーション)法などがあります。

潜在性結核感染症の診断に必要なIGRA(イグラ)

結核は感染してから発病するまでの潜伏期間が長い(成人で数か月以上)病気です。そのため、結核に感染していて発病していない潜在性結核感染症を診断治療し、結核の発病を減らすことが、重要な結核対策の1つとなっています。
潜在性結核感染症を見つけるために行われるのが、IGRA(イグラ)(インターフェロンγ遊離試験)と呼ばれる血液検査です。国内では、QFTとT-SPOTの2つが使われています。従来は、結核菌の感染を調べる検査として、ツベルクリン反応が行われましたが、BCG接種の影響を受けるために結果の解釈が難しい場合がありました。IGRA(イグラ)はBCG接種の影響を受けないため、より確実に結核感染を診断できます。

結核の感染経路を調べる分子疫学調査

患者から分離した結核菌を遺伝子レベルで解析して、結核菌の由来や感染経路を調べることを分子疫学調査と呼びます。最近は、遺伝子解析にVNTR(Variable numbers of tandem repeats:反復配列多型)法が使われています。解析の精度を上げるために解析部位を増やしたり、検査機関間で情報を共有できるように同じ方法で解析したりするなど、調査方法は年々、進歩しているところです。
この調査により、複数の結核患者が存在する集団で、各患者から得られた結核菌の遺伝子型が一致した場合、同一感染源による集団感染であることが証明されます。さらに、患者の行動調査と合わせることで、いつ、どのような状況で感染したかも推定できるようになります。

結核検査を活かすには

従来は、発病した結核を診断することが検査の目的でしたが、検査の進歩により、潜在性結核感染症を診断して発病を防いだり、感染経路が解明できたりする時代になりました。このような検査を活かして結核対策をすすめるためには、結核にかかった方、その家族や周囲の方、医療関係者、保健所職員など、多くの方の結核に対する理解と協力が不可欠となります。このニュースをきっかけに、結核に興味を持って頂ければ幸いです。

(参考資料および参考リンク)

(企画情報部 大塚 優子)

   
衛研ニュース No.191 平成31年3月発行
発行所 神奈川県衛生研究所(企画情報部)
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