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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.184

放射能調査の“いま”
~ 地道な調査を続けています!! ~

2018年1月発行

2011年3月11日の東日本大震災に伴う東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故より、この3月で7年が経とうとしています。だんだん皆様の記憶から薄れ、「放射能」という言葉を日々の暮らしの中で聞かなくなっていることと思います。この約7年間に渡る、神奈川県衛生研究所(以下、当所)の放射能調査の取り組みについてまとめました。

福島原発事故由来の放射性物質から受ける年間被ばく線量(推定)の推移

当所は、茅ヶ崎市下町屋に位置します。文部科学省の依頼により、2011年3月12日から空間放射線量率の監視を強化し、順次、降下物(雨水、塵)、大気浮遊じん、蛇口水、様々な食品についてγ線を放出する放射性物質を調べました。放射性物質の種類及び量を求め、この事故による、人への被ばく線量がどのくらいになるかを推定しました。2011年から2016年までの推定値を表1に示します。外部被ばくは、当所に設置されている空間放射線量率を測定するモニタリングポストの値から算出しました。呼吸に由来する内部被ばくは、当所で採取した大気浮遊じんの測定結果を、飲料水に由来する内部被ばくは、当所の蛇口水の測定結果を用いて算出しました。また、食事に由来する内部被ばくは、厚生労働省が実施した食品中の放射性セシウムから受ける放射線量の調査結果1)を引用しました。一般人の1年間の被ばく線量限度は、医療と自然放射線から受ける放射線量を除いて、1mSv未満になるように定められています。表1から事故当初の2011年においても0.143mSv未満と十分に年被ばく線量限度を下回っていたことが確認できます。2012年には2011年の1/2、2013年は1/4、2014年は1/5、2016年は1/8まで低下し、事故の影響は年々減少しています。

 

厚生労働省による食品中の放射性物質の基準値の見直し

当所では、2011年は、主に県内で生産された農畜水産物195検体の検査を実施しました。厚生労働省が定めた暫定規制値(表2左)を超過した食品は、乾しいたけ(県内産)2検体、牛肉(東北産)3検体、茶葉(生葉・県内産)4検体、茶葉(荒茶・県内産)6検体の計15検体でした。2012年4月より厚生労働省は、食品からの被ばく線量の上限を、緊急時の年間5mSvからより厳しい1mSvに引き下げることにし、食品衛生法に基づく食品中の放射性物質の新たな基準を設定しました(表2右)。また、当所では、2012年度からは、一部の県内生産の農畜水産物と県内に流通する加工食品を検査することになりました。2012年度は、210検体中生しいたけ(県内産)1検体のみ、基準値を超過しました。2013年度以降は、表3に示すように年間約200検体の調査では、基準値を超える食品はありませんでした。また、年々、放射性セシウムが検出される食品も少なくなりつつあります。

国の総合モニタリング計画の見直し

緊急時環境放射能調査として、2011年3月14日から定時降下物、大気浮遊じんを、3月18日からは、これらに加え、蛇口水を12月27日まで毎日採取し、測定しました。2012年からは、国の総合モニタリング計画が見直され、定時降下物は、1か月に1回(月間降下物)、蛇口水は3か月分をまとめ、(平日に1日1.5L採取し濃縮)より低いレベルまで放射能濃度を検出することになりました。その後、2016年から、蛇口水は年1回100Lを採取し、測定する平常時の方法に変更されました。

放射能測定器の充実

当所では、Ge半導体検出器付きγ線スペクトロメータ(以下、Ge検出器 図1)を2012年3月に1台増設、2015年には1台更新、2016年に県内の原子力施設監視(ウラン測定用)のために1台増設し、現在、5台で対応しています。また、2016年には試料交換が自動で出来るNaI(Tl)シンチレーションカウンタ(以下、NaI検出器 図2)を食品のスクリーニングが可能な機種に更新しました。Ge検出器(検出限界値 5Bq/kg生)の測定では1日2、3検体が限界ですが、NaI検出器(検出限界値20Bq/kg生)は、一日に50検体以上の測定が可能で、緊急時の汚染をスクリーニングするには大変有効な測定器です。

 

空間放射線量率の推移

2011年までは、県内のモニタリングポスト(以下、MP)は、原子力関連施設のある川崎市川崎区(5局)、横須賀市(8局)と当所(茅ヶ崎市・1局)の3地域にしか設置されておらず、県内広域の空間放射線量率を把握することはできませんでした。そのため、国の方針により、2012年に横浜市港北区、逗子市、海老名市、相模原市緑区、小田原市に1局ずつ計5局のMPが増設されました(図3)。事故以前の14局の空間放射線量率は、月平均値で19~43nGy/hで推移していましたが、事故後は2011年3月または4月に14局とも最高値が観測され、46~87nGy/hまで急激に上昇しました(図4)。現在は、14局とも事故以前の線量率より1~5nGy/h高いレベルにまで低下しています。2012年に増設された5局を含めた19局の線量率の推移から事故の影響は減少していることが確認できます。また、県内の線量率は、北東部が高く、県西部が低いという、地域差が認められています。この差は、これまでの調査結果2)から事故に起因するものではなく、MPを設置している地域の地質に起因するものと考えています。
この約7年間には、北朝鮮による地下核実験が4回行なわれ、その都度、緊急時放射能調査を実施し、本県に影響が無かったことを確認しています。また、県内の原子力関連施設の不測の事態に備え、緊急時モニタリング計画等の策定にも協力しています。今後も、目に見えない放射能の不安に、科学的に応えられるよう、調査研究を継続していきます。

図3 神奈川県内モニタリングポストの配置場所

図4 空間放射線量率の推移(2005年1月~2017年11月)

<参考資料・リンク>

  1. 厚生労働省ホームページ「食品中の放射性セシウムから受ける放射線量の調査」
  2. 神奈川県の放射能・放射線監視体制 衛研ニュース No. 142 2011年2月発行

(理化学部 桑原 千雅子)

   
衛研ニュース No.184 平成30年1月発行
発行所 神奈川県衛生研究所(企画情報部)
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