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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.176

自然毒による食中毒に気をつけよう

2016年9月発行

自然毒とは、植物や動物がもともと保有している、または食物連鎖により体内に蓄積されるなどした有毒成分のことです。この自然毒を原因とする食中毒は、国内で毎年発生しており、過去10年では25名の方が亡くなっています。これら自然毒による食中毒はなぜ起きるのでしょうか。また、自然毒による食中毒にならないためには、どのようなことに注意すればよいでしょうか。


自然毒による食中毒

自然毒を原因とする食中毒は、国内で毎年発生しています。表1に示すように、平成27年には全国で1202件の食中毒が発生しており、そのうちの96件が自然毒を原因とするものです。患者数は247名とさほど多くはありませんが、食中毒により死亡した6名のうち4名の原因が自然毒であり、致命率の高さからも、食品衛生上重要な問題となっています。

食中毒の原因となる自然毒は、植物性自然毒と動物性自然毒に分類されます。平成27年には、植物性自然毒による食中毒は58件、動物性自然毒による食中毒は38件発生しています。

植物性自然毒

植物性自然毒による食中毒の主な原因食品はきのこや高等植物注)です。表2に示すように、平成27年には、きのこではツキヨタケやクサウラベニタケ、テングタケによる食中毒が多く発生し、県内でも、イボテングタケというきのこによる食中毒が発生しました。高等植物ではスイセンやバイケイソウ類、イヌサフランなどが食中毒の主な原因食品となっています。
これらの植物は、毒性成分を含んでいるため、様々な中毒症状を引き起こします。例えば、イルジンSを含むツキヨタケは、嘔吐や腹痛、下痢などの消化器系の中毒症状を、イボテン酸、ムシモールを含むテングタケやイボテングタケは、消化器系の症状に加え、縮瞳や幻覚といった神経系の症状を引き起こします1)。また、コルヒチンを含むイヌサフランは、嘔吐や下痢、呼吸困難といった症状を起こし、平成27年には2名の方が亡くなっています1)

表2に示した「原因食品に似ている食品」は、自然毒を含む植物と見た目がとてもよく似た、食べられる植物です。例えば、毒性のあるツキヨタケは食用のヒラタケやシイタケによく似ていますし、スイセンの葉はニラとよく似ています。これらのよく似た食べられる植物と自然毒を含む植物を間違えて採取し、毒のある植物だと気付かずに食べてしまうことが、植物性自然毒による食中毒の主な原因となっています。
ただし、じゃがいもによる食中毒は、毒のある植物と間違えてしまうことが原因ではありません。毒性成分であるソラニンやチャコニンは、食中毒を起こすほどの量ではありませんが、もともとじゃがいもに含まれています。しかし、発芽部分や緑に変色した皮の下には、ソラニンやチャコニンが通常よりも多く含まれており、この部分を取り除かずに食べてしまうことが、食中毒を引き起こす原因となっています。

動物性自然毒

動物性自然毒による食中毒の主な原因食品は魚や貝です。表3に示すように、平成27年では、フグやアオブダイ、バラフエダイなどの魚、ホタテガイやエゾボラモドキ、キンシバイなどの貝が主な原因食品となっています。

これらの魚介類には毒性成分が含まれていて、それが原因となり中毒症状を引き起こします。フグやキンシバイに含まれるテトロドトキシンは、筋肉を麻痺させる作用があるため、しびれや呼吸困難といった症状が起こります1)。アオブダイなどに含まれるパリトキシンは、激しい筋肉痛を引き起こし、呼吸困難、歩行困難、痙攣などの症状を呈します1)。平成27年には、フグ及びアオブダイによる食中毒でそれぞれ1名の方が亡くなっています。
動物に含まれる自然毒は、表3に示すように、魚や貝の全体に含まれる場合と、一部の部位に局在している場合があります。例えば、フグの一種であるトラフグは、筋肉や皮、精巣には毒性成分であるテトロドトキシンは含まれていませんが、それ以外の部位にはテトロドトキシンが含まれている可能性があります。また、ホタテガイの中腸腺にはサキシトキシンが、エゾボラモドキの唾液腺にはテトラミンが含まれている場合があります。こういった毒性成分が含まれている部位を誤って食べてしまうことが、動物性食中毒を引き起こす原因となっています。

自然毒の食中毒を防ぐために

自然毒による食中毒の一番の原因は、食べられる植物や魚介類と間違えて、毒のあるものを食べてしまう「誤食」です。この誤食を避けるために、採取した植物や魚介類が食用であると確実に判断できない場合は、絶対に食べないでください。家庭菜園や畑などでは、野菜と観賞植物を一緒に栽培しないように注意しましょう。
また、じゃがいもやエゾボラモドキのように毒性成分が局在している場合には、毒のある部位を確実に取り除いてから食べるようにしてください。
ただし、フグの有毒部位の除去は、都道府県知事等が認めた者や施設に限って取り扱うこととされています。フグの素人判断による調理は絶対に行ってはいけません2)
なお、植物や魚介類に含まれる毒性成分の量は一定ではなく、その量の多さを見た目から判断することもできません。以前に食べたときには症状が出なかったとしても、次が大丈夫とは限らないので、素人判断で食べることは絶対にやめましょう。
万が一、採取した植物や魚介類を食べて体調が悪くなった場合には、すぐに医療機関を受診してください。

最後に

当所では、自然毒による食中毒の原因究明や再発防止のために、イボテン酸やムシモール、テトロドトキシンなど、一部の毒性成分について機器分析を実施しています。今後は、さらに多くの自然毒による食中毒に対応できるよう、調査研究を進めてまいります。

(理化学部 脇 ますみ)

注:根・葉・茎に分化している植物。種子植物とシダ植物が含まれる。


(参考リンク)
 
   
衛研ニュース No.176 平成28年 9月発行
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