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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.162

いわゆる脱法ドラッグの現状

2014年5月発行

 近年、脱法ドラッグの乱用が原因とされる健康被害、事件・交通事故等が多発しており、大きな社会問題となっています。法規制をすり抜けているとして「合法ドラッグ」、「合法ハーブ」などとして販売されるケースもありますが、決して安全なものではなく、また、平成26年4月以降は指定薬物の所持、使用、購入等が禁止されるなど、その法規制が強化されているところです。

「脱法ドラッグ」とは

 そもそも「脱法ドラッグ」とは法令上に明確に定義されていませんが、規制薬物に類似した化学物質が含まれており、摂取すると陶酔感、幻覚、興奮作用などが高まるとして販売されている薬物をいいます。多くの場合、脱法ドラッグは派手なデザインのパッケージに入れられて販売されています。その形態として、現在では粉末、液体及びハーブ状(植物片)などが一般的です。写真に示した通り、粉末の製品では白色や褐色などの粉末が樹脂製の小さな容器やチャック袋に入っています。液体の製品ではカラフルに着色された液体が小瓶に入っています。また、ハーブ状の製品では、一見すると小さく刻まれた植物の葉、茎及び花びらなどが混合されているだけのように見えます。その他に錠剤、シート状の製品なども出回っています。

 また、脱法ドラッグは用途を偽って販売されていることもあります。例えば、粉末状の製品では“バスソルト”、“フレグランスパウダー”、液体状の製品では“リキッドアロマ”、“アロマオイル”、そしてハーブ状の製品では“ハーブ”、“お香”など薬物のイメージとは無縁の名称が付けられている場合があります。しかし、特に液体製品では有害な化学物質が液体に溶かされていたり、ハーブ状製品では植物片に吹き付けられていたりするなど、その存在が巧妙に偽装されていますが、どの様な名称であってもその危険性には変りありません。

 
 
脱法ドラッグは危険です

 脱法ドラッグの乱用問題はテレビ、新聞等の報道でもたびたび取り上げられていますが、規制薬物の検出事例は後を絶ちません。各都道府県が行う脱法ドラッグの成分検査でも多数の規制薬物が検出されています。また、様々な未規制の化学物質も検出されていますが、既存の規制薬物に類似した構造であることから、同じような精神作用を持つことが考えられます。現状では法規制が追い付いていないだけであり、実際には今後の法規制対象の候補でもあるのです。
 そして、脱法ドラッグに絡む様々な事件・事故が現在も頻発しています。警察庁発表の「平成25年の薬物・銃器情勢」によると、平成25年の脱法ドラッグ製品に係る事件は125事件、検挙人数は176人となっており、いずれも前年よりも増加しています。最近の傾向として、未規制などを標榜しながら実際には麻薬を含有している事案、運転前に吸引したハーブの影響による衝突事故、運転中に吸引したハーブの影響により意識に変調を来して引き起こされた衝突事故など、危険運転致傷罪等の交通関連法令違反による事案が増加しています。

     
     

 また、神奈川県警のウェブサイトでは、神奈川県警察での平成25年中の脱法ドラッグ乱用者に係る取扱状況として、取扱人数は180名、健康被害118名、死亡5名と公表されています。その具体的な事例も公表されていますが、100名を超す健康被害と死者まで発生している状況は、脱法ドラッグの有害性の高さの顕れと言えます。
 この様な事件・事故及び健康被害の原因となる脱法ドラッグの作用については、含有する化学物質にもよりますが、その精神的な作用として、興奮作用、抑制作用または幻覚作用があるとされています。このような化学物質の多くは医薬品や生体機能の研究を目的とした研究用物質として開発されたものであり、人体への影響は明らかではなく、想定外の毒性等も多いと考えられます。また、1つの脱法ドラッグのパッケージから数種類の化学物質が検出される場合もあります。そのため、脱法ドラッグとしての人体に対する正確な有害作用、毒性等は予測しづらいのが実情であって、微量であっても強力な精神作用を持ち、重篤な健康被害を引き起こす可能性も危惧されます。

 
 
指定薬物の規制強化

 脱法ドラッグの乱用問題への対応として、平成19年より含有する化学物質を、薬事法により「指定薬物」として規制する対策が行われています。指定薬物とは「中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用(当該作用の維持又は強化の作用を含む。)を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物」と定義されています。規制開始当初は32種類(31物質・1植物)が指定されました。しかし、その後は法規制が行われると新たなその類似物質が出現するという“いたちごっこ”が繰り返されているのが現状です。そこで、厚生労働省は「包括指定」を行いました。これは従来の様に個々の化学物質を一つずつ指定薬物に指定するのではなく、依存性、毒性を持つ薬物と構造が類似した様々な化学物質をまとめて指定薬物に指定して規制するものです。
 これまでに包括指定された指定薬物の基本骨格を下図に示しました。まず、平成25年3月に、図1に示すような基本骨格を有する合成カンナビノイド系の物質が規制対象となりました。合成カンナビノイド系の物質は、主に“脱法ハーブ”などと呼ばれるハーブ状の製品より検出されています。続いて平成26年1月に、図2に示すような基本骨格をもつカチノン系の物質が規制対象となりました。カチノン系の物質は粉末、液体製品などの様々な形態の製品より検出されています。これらの基本骨格をもつ全ての化学物質が対象とされたわけではありませんが、それでも指定薬物の数は、平成26年4月1日現在、個別に指定された薬物と合わせて約1300物質以上と急増しました。

 また、従来は指定薬物として薬事法により規制されていた薬物を、麻薬に格上げして麻薬及び向精神薬取締法により規制する対策も行われています。指定薬物のうち、平成24年度は10物質、平成25年度は4物質が新たに麻薬に指定されました。
 更に、脱法ドラッグの対策として指定薬物への指定のみならず、その所持等の規制についても強化されています。指定薬物については、従来はその製造、輸入、販売、授与、または販売・授与の目的での貯蔵・陳列が原則として禁止されていました。しかし、その所持、使用については規制が無く、健康被害、事件・事故等が繰り返されていました。そのため、厚生労働省は薬事法を改正し、平成26年4月1日より指定薬物の所持、使用、購入、譲り受けについても禁止されることになりました。違反した場合には3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらが併せて科されることになります。この法改正は、最近の包括指定を含む指定薬物への積極的な指定と併せて、脱法ドラッグの流通及び乱用の阻止に向けた歯止めになると考えています。

 
ダメ。ゼッタイ。

 今まで説明した通り、脱法ドラッグへの対策強化がなされています。しかしながら、脱法ドラッグが絡む事件・事故は後を絶ちませんし、脱法ドラッグも相変わらず販売されています。当所ではこのような製品について県薬務課の依頼により含有成分の検査を実施しています。今後も規制薬物を含有する脱法ドラッグの発見に努め、県民の安心・安全につなげたいと考えています。
 また、脱法ドラッグはたとえ一度の使用であっても死につながる可能性があるなど、重篤な健康被害を引き起こす可能性がありますし、薬物依存の悪循環に陥る危険性もあります。インターネットでは脱法ドラッグに関する体験談等の様々な書き込みがみられますが、決して興味本位で使用しないこと、友人等に誘われたとしても断る、強引に勧められてもその場から立ち去るなど、とにかく脱法ドラッグには手を出さないことが重要です。一度きりの人生です、こんなことでダメにしてはもったいない。

 

(参考リンク)

※ 平成26年7月より「脱法ドラッグ」は「危険ドラッグ」と呼ばれるようになりました。

       

 (理化学部 熊坂謙一)

   
衛研ニュース No.162 平成26年 5月発行
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