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衛研ニュース     No.145      
科学の目で守る食の安全・安心
2011年7月発行
神奈川県衛生研究所
    「さあ食事をしよう!」と食べ物を口に入れたら、異物が出てきたり、変な味や臭いがしたり・・・。皆さんはこのような経験はありませんか?身体に悪くないだろうか、原因は何だろうかなど色々と心配になると思います。

   このような食品に関する疑問や不安などが神奈川県の行政機関の相談窓口に寄せられています。そして、その原因究明に科学的分析が必要となった場合には、行政機関の依頼に基づき衛生研究所が様々な検査を行います。

   今回は、原因究明のために衛生研究所が検査を行った相談事例とその理化学検査の内容を紹介します。

どのような相談があるのか

  理化学検査が必要となる相談には、異物が入っていた(異物混入)、味が変(異味) 、臭いが変(異臭)、色や見た目が変(外観異常)、体調を崩した(有症)などがあります。平成20年度〜平成22年度の衛生研究所で行った理化学検査数は図1のとおりで、特に異物混入の事例が多くありました。
図1 理化学検査の件数(H20〜H22年度)
 

検査の前に

   行政機関や検査の担当者を中心に、相談内容の確認や原因の予測、検査の内容などについて打ち合わせをします。食品や相談内容によって検査方法や分析機器が異なるため、原因物質の究明にはこのような打ち合わせが重要となります。
 

理化学検査とはどんな検査か

  分析機器を駆使して、異物や異味、異臭の原因物質を調べる検査です。異物の検査では、素材や含まれる成分は何か、混入した可能性があるものと同じかなどを調べます。異味、異臭の検査では、正常な食品と何が違うかを調べます。この『正常な食品』を『対照品』といいます。この対照品と相談品(相談が寄せられた食品)の検査結果を比較することが、原因究明のための重要な手がかりになります。

異物の検査

  食品に混入する異物には虫、毛、骨、繊維、プラスチック、金属などがあり、大きさや種類は様々です。混入する経緯には、原材料に混入していた異物を見逃してしまった、製造ラインに虫やごみが落下した、長期間の保存で食品中の成分が結晶化したなどがあげられます。
異物の検査は、異物の素材や成分を明らかにし、対照品と同じものか調べることが原因究明のカギとなるため、複数の分析機器を使って測定します。
 
異物事例1 太刀魚から動物の歯のようなものが出てきた
この事例では、異物は太刀魚の骨腫と考えられました。太刀魚や鯛などの魚では、骨成分が異常沈着してこのような腫瘍ができることがあるようです。
異物事例2 ハンバーグからプラスチックのような異物が出てきた

この事例では、異物とキャップの素材が一致したため、キャップが肉に混入し粉砕されたことが原因と考えられました。

 

異味の検査

 異味に関する相談には、苦い、えぐみがある、変な味がするなどがあります。原因には、苦みやえぐみのある物質が食品に入った、野菜などの中で苦みやえぐみのある成分が作られた、変敗してしまったなどがあげられます。

 異味の検査では、何が異味の原因物質か予測して、食品中からその成分をうまく取り出し、取り出した成分が異味の原因となるか確認することが原因究明のカギとなります。しかし、食品中には様々な物質が含まれるので、目的の成分を取り出すことは容易でなく、取り出した成分が異味の原因か確認できないこともあります。
 
異味の事例 じゃがいもを食べたら苦みとえぐみがした
未成熟のじゃがいもや表面が緑化したじゃがいもはソラニン類を多く含む可能性があります。表面が緑化していたら皮を厚くむき、苦みやえぐみを感じたら食べるのをやめましょう。
 

異臭の検査

 異臭に関する相談には、シンナー臭や消毒臭、プラスチック臭がするなどがあります。原因には、果物が熟しすぎて酢酸エチル(シンナーのような臭い)が発生した、次亜塩素酸などの消毒薬が付着していた、耐熱性のないプラスチックを加熱したために臭いが移ったなどがあげられます。

  異臭の検査では食品から揮発する成分を分析します。人の嗅覚の方が機器よりも鋭敏に感じる臭い成分が多いため、異臭は感じるものの機器では検出できない場合があります。また、異臭が発生した原因を探るため、異臭が発生した状況を再現してそれを対照品として検査する場合があります。
異臭の事例 弁当のご飯がプラスチック臭かった
 この弁当箱はスチレンを含む樹脂製で耐熱温度は高くありませんでした。加熱によりスチレンが弁当箱から揮発し、ご飯に移った可能性が考えられます。食品を容器に入れてレンジなどで温める場合は、必ず加熱する方法に対応したものを使うようにしましょう。
 

食の安全・安心を守るために

 食品に関する異物混入や異味異臭などが発生した場合、その原因を究明することが、健康被害の不安解消や再発防止の対策を行うために重要になります。異物検査は組成や成分によって有効な検査方法が異なり、小さいものや硬いものなど検査しにくい異物があることから、どのような素材か見定めることは容易ではありません。異味異臭の検査では、原因となりうる成分は様々で性質も異なるため、原因成分を予測して取り出すこと、分析機器で検出すること、そして、その成分が原因であるか確認することは、非常に困難となる場合があります。

  衛生研究所は、これまで積み重ねた知識と経験に基づいて、食の安全・安心を守るため、これからも異物混入などの食品に関する相談の原因究明に科学的側面から取り組むとともに、皆さんの食生活に役立つ情報を提供していきます。

(理化学部 酒井康宏)
衛研ニュース No.145 2011年7月発行
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