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NO.124

2008年2月発行 神奈川県衛生研究所


じんましんと青魚の関係

アレルギー様食中毒の話

さば
 
サバ


皆さんは「サバにあたる」原因をご存知でしょうか ?

  原因の一つに「アレルギー反応」があります。サバを食べて、その成分であるタンパク質に対して免疫反応が起こり、アレルギー状態が発生する場合は食物アレルギーです。また、最近はサバに寄生するアニサキスが原因のアレルギーも報告されています。これらのアレルギー反応はアレルゲンによる刺激を受けて、最終的に自分の体の中にある肥満細胞がヒスタミンを放出することでアレルギー状態を起こします。
  ヒスタミンは毛細血管拡張、平滑筋収縮、胃酸分泌等の多くの薬理作用を持つ物質で、肥満細胞に高濃度に存在し、花粉症や食物アレルギー等の免疫疾患にも深く関わっています。
   二つ目の原因は「アレルギー様食中毒」です。これは食物アレルギーと症状は似ていますが食物アレルギーではありません。ヒスタミンが多量に蓄積されたサバなどの青魚を食べると、食後 30分から数時間後に顔面紅潮、発疹、吐き気などの症状を呈することがあります。これは免疫反応とは関係なく、誰にでも起こりうる反応です(図1)。

図1 サバにあたる原因
図1 サバにあたる原因

ここでは食物アレルギーと混同されやすいアレルギー様食中毒についてお話します。

アレルギー様食中毒の原因物質「ヒスタミン」蓄積のメカニズム

  サバにはもともと多量のヒスタミンが含まれているわけではありません。では、なぜサバに多量のヒスタミンが蓄積されるのでしょうか。青魚と呼ばれるサバ、ブリ、アジなど回遊魚やマグロ、カツオなどの赤身魚には「ヒスチジン」というアミノ酸が多量に含まれています。「ヒスチジン」が多量に含まれる魚に「ヒスタミン生成菌(ヒスチジン脱炭酸酵素を有する菌)」が付着すると、ヒスチジンが分解され、多量の「ヒスタミン」が魚肉中に蓄積されることとなります(図 2)。

図2 アレルギー様食中毒の原因〜ヒスチジンからヒスタミンへ〜 
図2 アレルギー様食中毒の原因〜ヒスチジンからヒスタミンへ〜

ヒスタミンを生成するのはどんな細菌?

  魚に付着しているヒスタミン生成菌は大きく 2種類に分けられます。一つは腸内細菌科の細菌で、その中で最も有名なのは「モルガン菌」です。この菌は室温で増殖しますが、低温では増殖しにくい性質を持っています。
もう一つはビブリオ科に属する細菌ですが、この菌は海で生息しているため漁獲前に魚に付着している可能性が高く、低温でも増殖するので冷蔵保存の際も注意が必要です。

表1 国内のヒスタミンによるアレルギー様食中毒と推定される発生事例(平成17〜18年)
表1 国内のヒスタミンによるアレルギー様食中毒と推定される発生事例(平成17〜18年) 

アレルギー様食中毒の発生状況

   全国で年間十数件の事例が発生しています。原因施設は給食施設や飲食店が多く、また、原因となった魚はカジキ、マグロ、ブリなど大型魚の切身を調理したものが半分を占め、これらの魚は流通の最終段階で切身にされ販売されることが多く、流通の間の温度管理や不適切な取扱いによりヒスタミンの生成、蓄積が生じたものと考えられます(表 1)。

県内に流通する切身魚のヒスタミン生成菌汚染状況

   衛生研究所では平成 19年に神奈川県内で流通している切身魚について、ヒスタミン生成菌の汚染状況と切身魚に含まれるヒスタミン量を調査しました(表2,3)。

表2 切身魚の調査結果(平成19年)
  
表3 魚から分離されたヒスタミン生成菌
表2 切身魚の調査結果(平成19年) 
 
表3 魚から分離されたヒスタミン生成菌 

  ヒスタミン生成菌は白身魚より赤身魚から高率に検出され、その多くは腸内細菌科の菌でした。また、ヒスタミン量については、一般にヒスタミン量が100mg/100g(1000ppm)以上のときに食中毒が起こるといわれていますが、それを超えたものはありませんでした。

どうやってヒスタミン生成菌をみつけるの?

  現在、わが国では水産食品におけるヒスタミン生成菌の法的な規制がないため、ヒスタミン生成菌を検出するための公定法がありません。そこで、当所では次のような方法により検査を実施しています。
   ヒスタミン生成菌は「ヒスチジンからヒスタミンを生成する」、「酸性に強い」という特徴を持っていることから、魚の切身からヒスタミン生成菌を分離する際には、菌のこの特徴を利用して検査を行います。最初にヒスチジンを含む pH5.0 の培養液に魚肉を入れ、魚に付着している菌を培養します。ここでは酸性に強い菌のみが増殖できます。培養終了後、この培養液中に含まれていたヒスチジンがヒスタミンに変化していたかどうかをペーパークロマトグラフ法により確認します。検査用のろ紙に陽性対照(ヒスタミン水溶液)と陰性対照(培養液のみ)、培養後の培養液をそれぞれスポットして、展開液で拡散させます。

写真1 ペーパークロマトグラム結果

  陽性対照と同じように拡散し、試薬によって 赤色に変化したものをヒスタミン陽性としま す(写真 1)。陽性が確認された培養液にはヒスタミン生成菌が増殖していると推定されるので、培養液から寒天培地でヒスタミン生成菌を分離します。寒天培地では、ヒスタミン 生成菌が増殖しヒスチジンがヒスタミンに変 化すると培地が酸性(黄色)からアルカリ性(濃い紫色)に変化する反応を利用して、菌を分離します(写真 2,3)。

写真2 ヒスタミン生成菌      写真3 ヒスタミン非生成菌
     

アレルギー様食中毒を防ぐために

  一見、新鮮にみえる魚でも、漁獲から消費までの過程における不適切な取り扱いにより、ヒスタミンが蓄積される可能性があります。加熱調理をすることにより、ヒスタミン生成菌は死にますが、ヒスタミンは熱に強いため分解されません。そのため、生食用、加熱用の用途にかかわらず生食用と同様の衛生管理が必要です。
  欧米ではヒスタミンに対する規制値を設けており、その中でも米国食品医薬品局( FDA)ではヒスタミン食中毒防止のためのHACCP(危害分析重要管理点)衛生管理システムの導入を進めるように指導しています。魚介類の消費量の多いわが国においても、水産食品加工現場に対するHACCP衛生管理システムの導入が望まれます。

微生物部 伊達佳美

 
挿絵
No.124 平成20年2月発行 
 


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