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アレルギー研究プロジェクト

衛生研究所アレルギー研究プロジェクト研究成果

  アレルギー疾患を訴える人たちは先進工業国で著しく増加しています。わが国でも、人口の3分の1を超える人々がアトピー性皮膚炎、気管支喘息、花粉症、食物アレルギーなどの何らかのアレルギー疾患に罹っていると言われています。また、近年、若年者のアレルギー性疾患が急増していることも大きな問題となっています。
アレルギー研究プロジェクトでは、 「食物アレルギーに関する調査研究」 及び 「ダニ・ハウスダスト・カビ等によるアレルギーに関する調査研究」 の2つのテーマを中心に調査研究を推進しています。
  これらの研究のうち、平成17年度の研究成果の概要を紹介します。

食物アレルギーに関する調査研究

コアテーマ
神奈川県におけるアレルギーの実態調査 調理・加工による低アレルゲン化
研究課題

食物アレルギーによる発症予防事業
(厚生労働省地域保健推進特別事業)

水産食品の低アレルゲン化に関する研究
(神奈川県産学公地域総合研究)
研究成果






  食物アレルギーの原因究明および危害予測、発生予防対策に反映させることを目的として、県内 3地区の小学校の児童およびその家族を対象として、アレルギー疾患の実態、アレルギー発症と家族間の関係、また、アレルギー原因食品、およびそれらを材料とした加工食品での発症状況等について調査を実施した(2004年12月実施)。
  平成 16年度に行った集計結果に基づいて、平成17年度は統計解析を実施した。結果の概要はパンフレットにまとめて、研修会などでの資料として活用した。また、詳細な解析結果は報告書として、学校や保健所などでの栄養指導に役立てた。

  魚肉からアレルゲン物質を物理化学的方法によって除去すること、およびタンパク質分解酵素を用いて魚肉タンパク質を低分子化することによる魚肉アレルゲンの低減化を目標として検討した。
   得られた成果は、平成 18年3月に開催された日本水産学会大会にて口頭発表した。さらに、確立した低アレルゲン化水産食品の製法にしたがって、企業との連携により、試作品を作製して、実際に魚介類に対するアレルギーの患者さんにご協力していただき、低アレルゲン化食品としての有効性を評価する予定となっている。

ダニ・ハウスダスト・カビ等によるアレルギーに関する調査研究

研究課題

チリダニの生理・生態とアレルゲンに関する研究
−雌雄や発育ステージの違いがアレルゲン蓄積量に与える影響
(神奈川県政策課・重点基礎研究)

ハウスダスト中のダニの生育およびアレルゲン蓄積量に及ぼすフケ、アカの影響に関する研究
(都市エリア産学官連携促進事業・受託研究)

    チリダニの仲間の コナヒョウヒダニヤケヒョウヒダニ の死骸や排泄物(糞)などが、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を引き起こす最も重要なアレルゲンになります。アレルギー患者がダニアレルゲンと接触することを避けるためには、ダニを増やさないための環境対策が必要です。
  しかし、チリダニの雌雄や発育ステージ(卵、幼虫、前若虫、後若虫)毎に持つ虫体由来アレルゲンの量が分かっていないことから、屋内塵中のダニの発生状況を調査したとき、見つかったチリダニがどのくらいのアレルゲン量に相当するのか、詳細に評価することができませんでした。
 そこで、チリダニの虫体由来アレルゲン量を雌雄成虫、卵、幼虫、前若虫、後若虫毎に測定することによって、雌雄や発育ステージの違いが虫体由来アレルゲン蓄積量に与える影響について、比較、検討しました。
   アトピー性皮膚炎、気管支喘息などのアレルギー疾患患者は近年増加傾向にあり、その原因として室内塵(ハウスダスト)中のダニ及びその排泄物(糞)が重要視されています。アレルギー症状をひき起こすダニはチリダニ科に属し、このダニはハウスダスト中の食品かす、フケ、アカ、カビなどの有機物を餌に増えると言われていますが、実際のハウスダストを用いて詳しく検討した研究はほとんどありません。今回、ハウスダストを栄養源としてダニを飼育し、フケやアカがダニの生育及びアレルゲン蓄積量に及ぼす影響等を検討しました。





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「アレルギーに関する調査研究」の展開

    アレルギー疾患を訴える人たちは先進工業国で著しく増加しています。わが国でも人口の3分の1を超える人々がアトピー性皮膚炎、気管支喘息、花粉症、食物アレルギーなどの何らかのアレルギー性疾患に罹っていると言われています。また、近年、若年者のアレルギー疾患が急増していることも大きな問題となっております。
    衛生研究所では、平成13年から「アレルギーに関する調査研究」を衛生研究所の重点研究分野に位置づけて調査研究を実施してまいりましたが、平成15年6月、アレルギー・免疫関係の専門家を任期付研究員(招聘型)として採用したのを契機に、アレルギーに関する調査研究を充実強化してまいります。

アレルギー研究
1 アレルギー研究プロジェクトとは

    アレルギーに関する調査研究を中核研究課題として位置づけるとともに、前記の任期付研究員が中心となって、「 アレルギー研究プロジェクト」を立ち上げ、中長期的な計画を策定し、調査研究を実施することとしました。
    研究プロジェクトは、従来からの研究課題に加えて、新たな視点に立って食物アレルギーを始めとする研究課題を設定するとともに、研究所内での組織横断的な取組みを視野に入れて、アレルギーに関する調査研究を多面的に展開していきます。


2 研究の基本コンセプト

    食物アレルギーを中心として、ダニ、カビなどの環境に由来するアレルギーとも関連づけながら研究を展開していきます。研究の実施に当たっては、アンケート調査の実施などにより、県民の皆様のご要望やニーズなどを把握し、研究に反映させていきます。
    研究手法としては、(財)神奈川科学技術アカデミー(KAST)、 県立の試験研究機関 、大学などとも連携を図りながら、「神奈川県らしさ」をアピールしていきます。
    得られた研究成果は分かりやすい形で県民の皆様に情報提供し、日々の暮らしにお役に立てるように心がけてまいります。


3 調査研究の概要

    従来から実施している食品表示の試験検査、食品のアレルギーの検査法の検討、ダニ、カビ等によるアレルギーやシックハウス症候群などに対する対策、予防等の研究テーマに加えて、新たに下記の食物アレルギー関連の研究テーマを設定し、各種アレルギーの検査法の確立、アレルギーの原因物質の解明、実態調査等を中心に研究を進めます。


〔新たに設定した食物アレルギー関連の研究テーマ〕
神奈川県におけるアレルギーの実態調査
アレルギーの実態をアンケート方式によって調査を実施します。
食物アレルギーの原因物質の解明
アレルギーを引き起こす食物に含まれる原因物質を明らかにし、検査法の開発等へ結びつけます。また、(財)神奈川科学技術アカデミー(KAST)、慶応義塾大学等と連携を図りながら、新たなアレルギー分析法の開発にも取り組みます。
検査法の開発・精度向上
検査法の確立されていない食品について、Aで得られた成果をもとに新たに検査法を開発し、市販されている食品の検査等に役立てていきます。
アレルギー原因食品の低アレルギー化
発酵又は酵素処理等の加工方法を検討することにより、アレルギー原因食品の低アレルギー化を目指します。



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(参考)アレルギー研究関連についての学会・研究会・研究論文等一覧

  1. 学会・研究会など
  2. 発表者(代表)名

    題     名

    学  会  名

    伊藤正也(板垣康治)

    水産食品の低アレルゲン化に関する研究 第1報
    酵素処理によるアレルゲンの分解

    平成 18 年度日本水産学会大会
    ( 2006 )

    板垣康治 水産食品の低アレルゲン化に関する研究 第 2 報
    物理化学的方法によるアレルゲンの除去
    平成 18 年度日本水産学会大会
    ( 2006 )

    渡邊裕子ほか

    食物アレルギーに係わる特定原材料の表示の検証

    第49回神奈川県公衆衛生学会
    H15.11.14

    渡邊裕子ほか

    幼児・児童用菓子類における特定原材料の検出

    第40回全国衛生化学技術協議会年会
    H15.11.13-14(和歌山)

    甲斐茂美ほか

    食物アレルギーに関する基礎調査

    神奈川県衛生監視員協議会
    H15.7.8 (横浜)

    渡邊裕子ほか

    食品アレルギー表示における特定原材料検査の対応

    第15回地方衛生研究所全国協議会。関東甲信静支部理化学研究部会
    H15.2.21(東京)

    渡邊裕子ほか

    加工食品におけるELISA法を用いた特定原材料試験の実態

    第39回全国衛生化学技術協議会年会
    H14.10.24-25(山形)

    渡邊裕子

    アレルギー食品の分析法について

    第39回全国衛生化学技術協議会年会
    H14.10.24-25(山形)

    渡邊裕子ほか

    経口抗原特異的な抗体産生を増強するジブチルスズの影響解析<

    日本農芸化学会2002年度大会
    H14.3.24-27 (仙台)

    稲田貴嗣

    部屋の中のダニ達

    第5回サイエンス&テクノロジーフォーラム
    H14.2.5 (横浜)

    宮澤眞紀ほか

    接触皮膚炎感作相で発現するmRNAの発現パターンに関する研究

    第132回日本獣医学会
    H13.10.6-11(盛岡)

    稲田貴嗣

    室内塵中のダニ相

    平成13年度神奈川県衛生監視員協議会研究発表会
    H13.7.6 (横浜)

    稲田貴嗣

    神奈川県内一般家屋のダニ相

    第9回日本ダニ学会
    H12.10.12-14(三浦)

    渡邊裕子

    抗原特異的な T細胞応答に対するジブチルスズの影響

    2001年度日本農芸化学会総会
    H12.3.24-26(京都)

    宮澤眞紀ほか

    接触皮膚炎原因物質による皮膚のサイトカイン mRNA産生パターンについて

    第128回日本獣医学会
    H11.11.4-5(熊本)

    渡邊裕子ほか

    食品抗原に対する免疫応答への化学物質の影響

    日本食品衛生学会第78回学術講演会
    H11.10.28-29(長野)


  3. 研究論文・総説など
  4. 著者(代表)名

    題     名

    掲  載  誌

    宮澤眞紀ほか

    接触過敏反応におけるマスト細胞の動態について

    神奈川県衛生研究所研究報告, 30, 23-25 (2000)

    A.Ametami et. al.
    (H.Watanabe)

    Effect of chemicals on the immune response.

    Animal Cell Technology: Basic & Applied Aspects, 9, 77-81 (1998)


  5. 解説・報告など
  6. 著者(代表)名

    題     名

    掲  載  誌

    板垣康治 食物アレルギー −食の安全・安心の視点から−

    安全工学 44,
    311-316(2005)

    渡邊裕子(分担執筆)

    アレルギーと環境物質

    食品とからだ 免疫・アレルギーのしくみ 140-143 朝倉書店(2003)

    織田 肇(渡邊裕子)ほか

    経口免疫寛容への有機スズ化合物の影響―抗体産生能への影響

    平成13年度厚生科学研究(生活安全総合研究事業)研究報告―内分泌かく乱化学物質に関する生体試料分析法の開発とその実試料分析結果に基づくヒト健康影響についての研究(2002)

    織田 肇(渡邊裕子)ほか

    経口免疫寛容への有機スズ化合物の影響―抗体特異的なT細胞応答への影響

    平成12年度厚生科学研究(生活安全総合研究事業)研究報告―内分泌かく乱化学物質に関する生体試料分析法の開発とその実試料分析結果に基づくヒト健康影響についての研究(2001)


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アレルギー研究プロジェクト(平成17年度)の研究成果

 1 食物アレルギーに関する調査研究

  県内の食物アレルギーの実態調査を行い、疫学的な解析結果をもとに、主要なアレルゲン(原因物質)の解明、個々のアレルゲンに対応した低減化(調理や加工等による)の検討等を行う。

検討の結果得られた知見については、低アレルゲン化のための調理法や加工食品のアレルゲン性に関する情報としてデータベース化し、食物アレルギーの治療や予防への活用を目指します。 

(1)食物アレルギーによる発症予防事業
           (厚生労働省・地域保健推進特別事業/平成16〜17年度)
(2)水産食品の低アレルゲン化に関する研究
           (県政策課・産学公地域総合研究/平成17〜20年度)


 

食物アレルギーによる発症予防事業 

 

 

1 はじめに

食物アレルギーの原因究明及び危害予測、発生予防対策等に反映させることを目的として、県内3地区(川崎市、相模原市、小田原市)の小学校の児童及びその家族(計34,400余名)を対象として、アレルギー疾患の実態、アレルギー発症と家族間の関係、アレルギー原因食品及びそれらを材料とした加工食品での発症状況等についてアンケート調査を行いました。

調査結果を解析するとともに、回答があった食品等について実試料による抗原性等の検証等を行い、それらの成果を食物アレルギー発症予防対策等の施策に反映させていきます。

2 研究成果の概要

調査結果によれば、何らかのアレルギー症状がある人は全体の約50%を占めていました。食物アレルギーがあると答えた人は全体で約10%を占めており、特に幼児期から20歳まで高い傾向が見られました。原因食品としては、これまでも上位を占めていた卵、牛乳に加え、魚介類によるアレルギーの発症頻度が低年齢層でも高いことがあげられます。さらに、卵、牛乳では就学時期以降に治癒する割合が高いのに比べ、魚介類は治癒率が低いことも特徴のひとつとなっています。また、果物によるアレルギー発症率も高いという結果が出ていますが、花粉症と果物アレルゲンの関連性があることが知られていることから、今後も増加する可能性があると考えられます。

今回の調査の特色である調理・加工によるアレルゲン性の消長については、例えば、魚に対してアレルギーがある人であっても、かまぼこやかつお節は食べてもアレルギーが起きない人が90%もいることが明らかとなりました。現在、多くの医療機関では、魚にアレルギーがある場合、すべての魚種及び魚肉を原料とするすべての加工品まで食べることを控えるよう指導していますが、今回の調査結果は、魚種、調理法、加工法によっては、たとえ、魚にアレルギーがあっても、食べることができる可能性があることを示唆するもので、非常に興味深い結果といえます。

これらの研究成果については、平成18年3月4日(土)開催の「食物アレルギーフォーラム」(会場:県立保健福祉大学)で概要発表を行いました。また、概要パンフレット等をもとに、小中学校の栄養士や養護教諭、保健所の栄養士、保健師、監視員等の公衆衛生関係実務者、一般県民等を対象にして、講座や研修会の開催、講師派遣、 情報誌等により研究成果の普及啓発に努めています。(茅ヶ崎市内の小学校での研修会(平成18年5月実施)の様子)。
衛研 NEWS116号 、まちアポ誌( 食物アレルギーニュース

3 今後の展開

調査の結果得られたアレルゲンに関する情報は、それぞれの性質に応じた低アレルゲン化のための調理法や加工食品のアレルゲン性に関する情報と合わせてデータベース化し、学校給食での活用や病院での負荷試験、治療食への応用を図ります。さらに、県民を対象とした乳幼児期における栄養指導に活用していくことによって、食物アレルギーの予防を目的とした「食育」を研究テーマとして展開していく予定です。


茅ヶ崎市内の小学校での研修会の様子
茅ヶ崎市内の小学校での研修会の様子

水産食品の低アレルゲン化に関する研究 

 

1 はじめに

   魚介類を対象として、タンパク質分解酵素を用いて魚肉タンパク質を低分子化する「酵素法」やアレルゲンの性質を利用してアレルゲン物質を除去する「物理化学的方法」により、スケトウダラなどの水産食品のアレルゲンの低減化技術を検討しました。さらに、医療機関との連携により、個々の患者のアレルゲンに対応した低アレルゲン性の加工食品や低アレルゲン化を目的とした調理法に関する情報を蓄積し、抗原の確認などアレルギー診断と治療に活用することを目指します。

 2 研究成果の概要

 日本の伝統的な水産食品である「魚醤(うおじょうゆ)」「かまぼこ」に着目し、抗原性及びアレルゲン性を指標として、アレルゲンを「分解する」又は「除去する」ことにより、効率的に魚介類を低アレルゲン化する手法を検討しました。抗原性及びアレルゲン性の指標は、魚類の主要アレルゲンであるパルブアルブミン及びコラーゲン(※)を対象としました。

分解法では、市販されている数種の「魚醤」及び酵素により魚介類を分解して製造された「エキス」の抗原性を調べ、また患者血清を用いたELISA法により、アレルゲン性を調べました。その結果、ある種の酵素は効率的に魚肉を低アレルゲン化することが可能であることなどが分かりました。神奈川県の地場産業の一つである「かまぼこ」をはじめ魚肉ねり製品は、その原料であるすりみを製造する際、「水さらし」を行うことによりパルブアルブミンを除去できます(除去法)。この除去法を用いて、種々の魚種を調べた結果、スケトウダラなど原料のアレルゲン含有量が低いものを使った製品のアレルゲン性は、低アレルゲン化食品として利用可能なレベルまでアレルゲンが低減化されていました。一方、コラーゲンは難溶性であり、「水さらし」では除去できませんが、塩化カリウムにより塩可溶性のアクトミオシン(ねり製品の製造に不可欠なタンパク)を溶解し、塩に不溶であるコラーゲンを効率的に分別できることが分かりました。以上の研究を通して、エキス、ねり製品ともに、低アレルゲン化のための手法を確立することができました。

3 今後の展開

   民間企業を含む産学公の共同研究により、低アレルゲン化エキス及び低アレルゲン化すりみの調製(臨床試験用サンプルの調製)を行い、それらをもとに臨床試験等(皮膚試験・負荷試験)を実施し、有効性の評価を行っていきます。

さらに、加工・調理法の工夫による魚アレルゲンの低減及び有効性の評価について検討を行い、低アレルゲン化に関する研究成果に反映させていく予定です。

 

※   パルブアルブミン及びコラーゲン:
ともに魚類の筋肉に含まれる主要なアレルゲンとなるタンパクで、パルブアルブミンは筋形質タンパクの一種、コラーゲンは筋基質タンパクの一種である。




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 2 ダニ・ハウスダスト等によるアレルギーに関する調査研究

  近年、アトピー性皮膚炎、気管支喘息などのアレルギー疾患患者が増加しており、ハウスダスト中のダニが問題となっています。特に小児喘息の80%以上は居住環境中のダニが原因と言われています。

そこで、ダニアレルギーの予防対策の一環として、ダニの生理や生態とアレルゲンとの関係に着目し、ダニの雌雄別、発育ステージ別の虫体由来アレルゲン量の把握・検討を行いました。また、大学、企業等との共同研究の一環として、フケやアカがダニの生育及びアレルゲン蓄積量に及ぼす影響等も併せて検討しました。

(1)チリダニの生理・生態とアレルゲンに関する研究−雌雄や発育ステージの違いがアレルゲン蓄積量に与える影響(県政策課・重点基礎研究/平成17年度)

(2)ハウスダスト中のダニの生育及びアレルゲン蓄積量に及ぼすフケ、アカの影響に関する研究(都市エリア産学官連携促進事業・受託研究/平成17年度)

チリダニの生理・生態とアレルゲンに関する研究
−雌雄や発育ステージの違いがアレルゲン蓄積量に与える影響

 

1 はじめに

チリダニの仲間のコナヒョウヒダニヤケヒョウヒダニの死骸や排泄物(糞)などが、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を引き起こす最も重要なアレルゲンになります。両種とも殺虫剤が効きにくいなど駆除が難しいことから、アレルギー患者がダニアレルゲンと接触することを避けるためには、ダニを増やさないための環境対策が必要です。しかし、チリダニの雌雄や発育ステージ(卵、幼虫、前若虫、後若虫)毎に持つ虫体由来アレルゲンの量が分かっていないことから、屋内塵中のダニの発生状況を調査したとき、見つかったチリダニがどのくらいのアレルゲン量に相当するのか、詳細に評価することができませんでした。そこで、チリダニの虫体由来アレルゲン量を雌雄成虫、卵、幼虫、前若虫、後若虫毎に測定することによって、雌雄や発育ステージの違いが虫体由来アレルゲン蓄積量に与える影響について、比較、検討しました。

 2 研究成果の概要

コナヒョウヒダニの虫体由来アレルゲン(Derf2)量を測定しました。雌雄成虫及び発育ステージ別のDerf2量を表に示します。  

卵は1000個/mlの濃度の抽出液でDerf2量を測定しましたが、ELISAキットで検出される感度(0.5ng)以下であることから、アレルゲンとしての重要性が低いことが明らかになりました。

幼虫から後若虫までは成長に伴ってDerf2量が3.1倍に増加しましたが、体積の増加(5.6倍)に比べ増加の割合は小さいことが分かりました。後若虫の体積に対する雄成虫と雌成虫の体積はそれぞれ1.3倍、2.7倍でしたが、後若虫のDerf2量に対する雄成虫と雌成虫のDerf2量はそれぞれ3.7倍、7.2倍と体積の増加以上に増加の割合が大きく、繁殖能力とDerf2量の増加に関係がある可能性が示唆されました。雄成虫と雌成虫のDerf2量の比(1:2.0)はその体積比(1:2.2)とほぼ同じでした。

3 今後の展開

今後はチリダニの排泄物(糞)由来アレルゲン(Der1)量が生息環境の変化(チリダニの活動に影響を与える温湿度などの違い)によってどのように変化するのかを調査する予定です。

       表 ステージ別虫体由来アレルゲン(Derf2)量

ステージ別虫体由来アレルゲン

 

参考 チリダニとダニアレルゲン
  
チリダニ科ヒョウヒダニ属コナヒョウヒダニ(学名:Dermatophagoides farinae
  
                        ヤケヒョウヒダニ(学名:Dermatophagoides pteronyssinus
   排泄物由来アレルゲン(Der1)
     
    コナヒョウヒダニの排泄物由来アレルゲン(Derf1)
     
    ヤケヒョウヒダニの排泄物由来アレルゲン(Derp1)
   虫体由来アレルゲン(Der2)
     
    コナヒョウヒダニの虫体由来アレルゲン(Derf2)
             
 ヤケヒョウヒダニの虫体由来アレルゲン(Derp2)

コナヒョウダニ(オス) コナヒョウダニ(メス) ヤケヒョウダニ(オス) ヤケヒョウダニ(メス)
コナヒョウダニ(オス)
コナヒョウダニ(メス)
ヤケヒョウダニ(オス)
ヤケヒョウダニ(メス)

 

ハウスダスト中のダニの生育及びアレルゲン蓄積量に及ぼすフケ、アカの影響に関する研究

 

 

1 目 的

 アトピー性皮膚炎、気管支喘息などのアレルギー疾患患者は近年増加傾向にあり、その原因として室内塵(ハウスダスト)中のダニ及びその排泄物(糞)が重要視されています。アレルギー症状をひき起こすダニはチリダニ科に属し、このダニはハウスダスト中の食品かす、フケ、アカ、カビなどの有機物を餌に増えると言われていますが、実際のハウスダストを用いて詳しく検討した研究はほとんどありません。今回、ハウスダストを栄養源としてダニを飼育し、フケやアカがダニの生育及びアレルゲン蓄積量に及ぼす影響等を検討しました。

2 研究成果の概要

10世帯の家庭の掃除機から分別したハウスダストについて、塵1gあたりのダニ数とダニの排泄物(糞)由来アレルゲン量(Der1)を測定したところ、ダニ数は2〜6,972匹、Der1量は0.12〜190μgの範囲となり、家庭によってダニ数及びアレルゲン量は大きく違うことがわかりました。ついで、生きているチリダニを、ダニ数が少なくDer1量が低かった5世帯(低アレルゲン区)の家庭のハウスダストに加えて、気温25℃、湿度65%の飼育室で飼育し10週間後にダニ数を測定したところ、あまり増えなかったハウスダスト(試料No.14)から、当初の約140倍に増えたハウスダスト(No.28)まで様々でした。また、ダニがあまり増えなかったハウスダスト(No.14)ではDer1増加量もあまり大きくはありませんでしたが、ダニが約140倍に増えたハウスダスト(No.28)では最大約500倍になりました。これは、ハウスダストに含まれる食品かす、フケ、アカ、カビなどの有機物量が家庭によって大きく違っていることによるものと推測されます。さらに、ダニ数及びDer1量の増加が少なかったハウスダスト(No.14)にフケやアカを加えて飼育したハウスダスト(No.14+)では、加えなかった場合に比べて10週後のダニ数は約40倍、Der1量は約19倍増えたことから、フケやアカはダニの餌として特に重要であることがわかりました(表、図)。

3 今後の課題

   今後、ハウスダストに餌として加えるフケやアカの添加割合のほか、食品かす、カビなどの添加量など飼育条件を変えてダニ生育試験を行い、どんな条件がダニの生育及びアレルゲン蓄積量に影響するかをさらに詳しく検証する必要があります。

生育試験におけるダニ数及びアレルゲン蓄積量
フケとアカ添加がダニ数およびアレルゲン量へ与える影響

 



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