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短報

チョコレート製品及びチューインガム中のカフェイン及びテオブロミン含有量の測定

岸 弘子

Measurements of contents of caffeine and theobromine in chocolate products and chewing gums

Hiroko KISHI

神奈川県衛生研究所 理化学部

253-0087 茅ヶ崎市下町屋1-3-1 


はじめに

 カフェイン等のキサンチン誘導体(図1)は,中枢神経興奮,心筋刺激,利尿等の生理活

性を有する.中枢興奮作用の強さはカフェイン,テオフィリン,テオブロミンの順である.低年齢児が摂取する機会の多い菓子類にも,これらが含まれおり,市販菓子の実態を把握し,過剰摂取の危険性を評価する目的で,含有量を調査した.今回は,テオブロミンとカフェインを含むことが知られているチョコレートを原料とする菓子(チョコレート製品),さらに,カフェインによる眠気防止効果を謳った製品が販売されているチューインガムを調査対象とし,測定項目はカフェイン及びテオブロミンとした.

方法

1. 試薬等

標準品:カフェインは和光純薬製,テオブロミンは関東化学製の試薬特級を用いた.

混合標準原液: テオブロミン50mgを,約80mlの水に加温しながら溶解した.これに,カフェイン50mgを加えて溶解し,全量100mlとしたものを混合標準原液とした.(各500μg/ml)

透析膜:透析膜36/32(平面幅43mm,直径27mm,膜厚0.0203mm,分画分子量14000,Viskase製)

その他の試薬等は,守安らの方法1)に準じた.

2. HPLC条件

HPLCAgilent Technologies1100シリーズ,カラム:Atlantis dC18(4.6mm i.d.×150mm, 5μm ,Waters製),移動相:アセトニトリル−0.01Mリン酸緩衝液pH3.5(1:9)混液,流速:1.0ml/min,検出:フォトダイオードアレイ検出器(検出波長:275nm),カラム温度:40℃,注入量:20μl

3. 試験溶液の調製

1)チョコレート製品

試料を粉砕により均質化し,その2〜10gを量り,水20mlを加えて沸騰水浴上で20分間加熱後,少量の水で透析膜に充填した.透析外液に80℃以上の温水を用い全量を約200mlとした後,沸騰水浴中で1時間加熱した.冷後水を加えて全量を200mlとし,時々揺り動かしながら室温で4時間透析し,その透析外液を試料溶液とした.

2)チューインガム

 試料を細切しその10gを量り,水40mlを加えて沸騰水浴上で20分間加熱,よく混和し,その抽出液を分取した.更に残渣に水40mlを加え,同様の操作を行って得られた抽出液を合わせ,冷後全量を100mlとし,ろ紙(5A)でろ過し,ろ液を試料溶液とした.

3)HPLC用試験溶液の調製

 守安らの方法1)に準じ,試料溶液を BAKERBOND spe(SO3H)カートリッジカラムで精製し,HPLC用試験溶液とした.HPLC試験溶液中のカフェインまたはテオブロミンの濃度が,検量線の濃度範囲を超えた場合は,試料溶液を適宜水で希釈し,これを試料溶液と同様にカートリッジカラムで精製して,HPLC用試験溶液とした.

4. 検量線の作成

混合標準原液を水で希釈し,0.5, 1, 5, 10, 50及び100μg/mlの検量線用混合標準溶液を調製し,得られたピーク面積から検量線を作成した.

5.添加回収実験

試料は,ホワイトチョコレート(カフェイン41.7 μg/g,テオブロミン13.6μg/g含有)及びチューインガム(カフェイン,テオブロミン不含有)を用いた.秤量した試料に,ホワイトチョコレートには1000μg/g,チューインガムには500μg/gとなるように混合標準原液を添加,試料溶液を調製し,回収率を求めた.さらに,守安らの方法1) の定量下限である10μg/g付近の濃度での添加を行い,回収率を確認した.

結果及び考察

1.添加回収結果

ホワイトチョコレート,チューインガム共に回収率は90%以上で,良好な結果が得られた(表1).

また, 10μg/g添加で65%以上の回収率が得られた.低濃度での添加回収結果と各試料のHPLCクロマトグラムを考慮し,本報告では,チョコレート製品は10μg/g,チューインガムは5μg/gを定量下限とし,定量下限未満の場合は不検出とした.

2.市販食品の検査結果

 チョコレート製品21検体,チューインガム7検体についてカフェイン及びテオブロミンの分析を行った.代表的なクロマトグラムを図2に示した.

すべての試料で,定量を妨害するピークは認められなかった.また,検出されたピークについて,吸収スペクトルを標準品と比較したところ,良好に一致した.

チョコレート製品の分析結果を表2に示した.

すべてのチョコレート製品からカフェイン及びテオブロミンが検出された.カカオの成分の割合が多いのは,チョコレート,チョコレート菓子,準チョコレート,準チョコレート菓子の順であるが2),カフェイン及びテオブロミンの濃度順とは一致しなかった.No.8はホワイトチョコレートで,原材料中にテオブロミンをほとんど含まないココアバターの割合が多く,製品中の濃度も低いと考えられた.その他の試料も,使用された原材料により,カフェイン,テオブロミンの濃度が影響を受けたと推定された.チョコレート製品中のカフェイン,テオブロミンの濃度は,すでに報告されている普通のチョコレート3)と同レベルかそれ以下の濃度で,過剰摂取の危険性は低いと考えられた.

チューインガムの分析結果を表3に示した.

チューインガムについては,カフェイン,カカオ抽出物,茶抽出物の表示のある試料からカフェイン,テオブロミンが検出された.特にカフェインの表示のあったNo.1とNo.2は高濃度に含まれていた.No.1は粒ガムで1粒1.41gであり,8430μg/g含有されているため,1粒で約12mgとなる.カフェインの薬用量は0.1〜0.3gとされており4),10粒の摂取で同程度の摂取量となる.また,No.2は板ガムで,1枚2.95gであり,3730μg/g含有されているため,1枚で約11mgとなる.1包装9枚入りで,1包装の摂取で薬用量と同程度となる.これらは,眠気防止効果を謳った商品で,低年齢児用ではないが,注意が必要と考えられた.

まとめ

 菓子中のカフェイン及びテオブロミンの含有量の調査を行った.チョコレート製品すべてからカフェイン及びテオブロミンが検出された.チューインガムではカフェインを高濃度に含有する商品があることから,低年齢児はカフェインの表示のある製品を避ける等の注意が必要と考えられた.

 本研究は,平成19年度食品衛生専門監視班先行調査事業により行った.

(平成20年7月28日受理)

文献

1) 守安貴子,斉藤和男,中里光男,石川ふさ子,藤沼賢司,二島太一郎ほか:HPLCによる食品中のカフェイン,テオブロミン及びテオフィリンの同時分析法,食品衛生学雑誌, 37,14-19 (1996)

2)日本チョコレート・ココア協会:チョコレート類の表示に関する公正競争規約 

http://www.chocolate-cocoa.com/statistics/ rules/index.html>

3)国民生活センター:商品テスト結果,高カカオをうたったチョコレート

http://www.kokusen.go.jp/test/data/s_test/n-

20080206_2.html>

4)第15改正日本薬局方解説書,pp.C-929−C-934,廣川書店,東京(2006)