腸管出血性大腸菌感染症

ベロ毒素と呼ばれる毒素を産生する大腸菌(腸管出血性大腸菌)による感染症です。加熱が不十分な食肉の摂取などによって感染し、血の混じった便(血便)を伴うことが特徴です。例年、報告数は5月頃から増加し、6月から9月にかけてピークになります。感染症法では全数把握対象疾患3類感染症に分類されています。また、学校保健安全法では第3種の感染症に定められていて、診断された場合は「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがない」とされるまで出席停止の扱いになります。

※全数把握対象疾患:診断したすべての医師が最寄りの保健所に届けなければならない疾患を指し、感染症法という法律で1類から5類までが定められています。

感染経路

腸管出血性大腸菌で汚染された食物(加熱が不十分な食肉など)や水の摂取によって感染します。またプールやトイレ、風呂などで感染者の便を介して口から感染する危険性があります。腸管出血性大腸菌は感染力が強く、少量の菌量で人が感染する可能性があります。また感染してから症状が出るまでの期間(潜伏期間)が、通常の食中毒菌よりも長い(3~7日)ことが特徴です。

症状

腸管出血性大腸菌に感染して3~7日後に、嘔吐、激しい腹痛を伴う頻回の水様便の後に、血便になります。血液の混入は次第に増加し、ひどい場合はほとんど血液のみが出るといった状態になります。多くは37~38度の発熱を伴います。これらの症状は通常、5~7日で改善しますが、下記の溶血性尿毒素症候群や脳症といった重篤な合併症を伴うことがあり、注意が必要です。中には症状がほとんどなく、便の検査で腸管出血性大腸菌が検出されて初めて診断される場合もあります(無症状病原体保有者)。

溶血性尿毒素症候群(HUS)

細菌の出すベロ毒素などによって腎臓の血管の細胞が障害され、赤血球の破壊(溶血)、血小板の減少、腎不全をおこした状態で、多くは腸管出血性大腸菌感染症において現れます。溶血による息切れや動悸などの貧血症状、血小板の減少による腕や脚の皮下出血がみられます。また急速に腎臓の機能が低下し、尿量が少なくなり、尿毒症のために意識障害がみられることもあります。5歳以下の小児に多く、人工透析が必要になることもあります。2010年から2012年の3年間における感染症発生動向調査では、神奈川県の腸管出血性大腸菌感染症449例において、HUSは12例(2.6%)にみられました。

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診断について

診断には、感染した人の便から腸管出血性大腸菌を検出することが必要です。腸管出血性大腸菌が産生するベロ毒素にはVT1、VT2の2種類があります。また、O抗原という血清型で分類するとO157が最も多く、他にO26やO111などがあります。腸管出血性大腸菌感染症の治癒の確認には、24時間以上の間隔をおいた連続2回の検便によって、いずれも菌が検出されないことが必要です。

治療について

安静、水分補給、下痢に対して整腸剤を用いるなどの対症療法が中心になります。必要に応じてホスホマイシン、キノロン系などの抗菌薬が使用されます。腸管内の菌量が増えた状態で抗菌薬を使用すると大量の毒素が放出され、溶血性尿毒素症候群(HUS)をおこす可能性が高まるとされていますが、症状が現れてから早い時期に抗菌薬を使用するとHUSの発症が減少するという報告もあり、抗菌薬の使用は医師の判断に任されています。

予防のために

腸管出血性大腸菌は中心部までの75℃・1分間の加熱、また逆性石鹸やアルコールなどの消毒剤で死滅するため、食品の十分な加熱、十分な手洗いで感染を予防することが可能です。
調理や食事の前、トイレの後、またおむつ交換前後などでは石鹸と流水でしっかりと手洗いを行うことが大切です。また腸管出血性大腸菌は症状が治まった後も数週間は便から検出されるため、便中に腸管出血性大腸菌がいないことが確認されるまでは入浴を最後にし、タオルの共用を避けるなどの対応が必要です。

参考リンク

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