腸チフス・パラチフス

腸チフスはチフス菌(Salmonella Typhi)、パラチフスはパラチフスA菌(Salmonella Paratyphi A)による感染症です。衛生環境の悪い地域で流行し、アジア、アフリカなど世界各地で発生がみられています。神奈川県ではそれぞれ年間10例程度の報告があり、その多くに海外渡航歴があります。腸チフス・パラチフスは、いずれも感染症法において全数把握対象疾患3類感染症に指定されています。また、学校保健法において第3種学校感染症に指定され、診断後は感染のおそれがないと認められるまで出席停止となります。

※全数把握対象疾患:診断したすべての医師が最寄りの保健所に届けなければならない疾患を指し、感染症法という法律で1類から5類までが定められています。

感染経路

チフス菌、パラチフスA菌に汚染された食品や飲み水などを介して、人から人へ感染します(経口感染)。また胆石がある場合は、菌が胆石に定着するために病状が回復した後も菌の保有者となることがあります。

症状

腸チフスとパラチフスの症状はほとんど同じですが、一般的にパラチフスの方が、症状が軽いとされています。細菌に感染して7~14日後に、発熱、頭痛、下痢または便秘などの症状が現れます。その後高熱が1~2週間続き、症状出現から3週目になると徐々に熱は下がる傾向になりますが、この時期、腸出血や腸穿孔などの合併症がみられることがあります。チフスは腸管の症状よりも、むしろ全身の症状が中心で敗血症をおこすことが多く、血液から菌が分離されることがしばしばあります。約5%に髄膜炎・脳炎などの合併症が起こるとされます。

診断について

血液や便、胆汁などからチフス菌、パラチフスA菌を検出することで診断します。診察の所見で「3徴候」とされるものに、「相対的徐脈(発熱のわりに脈拍数が多くならない)」、「脾腫(脾臓の腫れ)」、「バラ疹(胸や背中などにみられる直径2~4mmの赤い発疹)」がありますが、なかなかこれらが全て揃うことはありません。他に、急性期の白血球減少(3,000/mm3近くまで低下)や軽度の肝機能(AST、ALT、LDH)の上昇がみられます。

治療について

抗菌薬による治療が主体です。以前はニューキノロン系抗菌薬が第1選択薬として使われていましたが、耐性菌が増加してきているため、検出菌の感受性確認が重要です。

予防のために

感染がみられる地域では、生水や生もの、氷、皮の剥かれた野菜・果物などの摂取を避けることが大切です。腸チフスに対するワクチンはありますが、日本では未承認であり限られた施設でしか接種できません(接種してから効果が現れるまで1~2週間程度かかります)。腸チフスのワクチンは、パラチフスの予防効果はありません。

参考リンク

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